タンスの中やカーペットの上で、小さな毛虫のような虫を見つけた時、多くの人はそれを全て「衣類を食べる害虫」と一括りにしてしまうかもしれません。しかし、家の中に発生する衣類害虫には、カツオブシムシの他にも「イガ」という蛾の仲間が存在し、両者の幼虫は似ているようでいて、実は明確な違いがあります。正しい駆除と対策のためには、まず敵の正体を正確に見極めることが重要です。カツオブシムシの幼虫は、前述の通り、紡錘形で節があり、全体が硬い毛で覆われているのが最大の特徴です。色は茶褐色や縞模様で、乾燥した環境を好み、活発に動き回ります。彼らは繊維の表面を削るように食べるため、衣類に開く穴は、輪郭がギザギザとした不規則な形になることが多いです。一方、イガの幼虫は、見た目が大きく異なります。彼らは白いイモムシ状の姿をしており、頭部だけが茶色です。そして、最も特徴的なのが、自分が食べた衣類の繊維やホコリを使い、筒状の巣(蓑)を作ってその中に隠れていることです。移動する際も、この巣を引きずるようにして動くため、「ミノムシ」と間違われることもあります。イガの幼虫はカツオブシムシよりも湿度の高い場所を好み、特に汗や食べこぼしなどの汚れた部分に集中的に被害を与えます。衣類に開く穴も、巣を作った場所を中心に、比較的くっきりとした円形になる傾向があります。対処法は両者とも基本的には同じで、清掃、熱処理、防虫剤が有効です。しかし、敵の正体を知ることで、対策の重点をどこに置くべきかが見えてきます。例えば、乾燥したホコリっぽい場所で毛深い虫を見つけたら、カツオブシムシの可能性が高いため、全体の掃除と乾燥した環境の維持が重要になります。逆に、汗ジミのある衣類に巣を背負ったイモムシがいたら、イガの可能性が高いので、しまう前の洗濯と汚れ落としをより徹底する必要があります。ただ闇雲に怖がるのではなく、相手を冷静に観察し、その正体を見極めること。それが、害虫対策のプロフェッショナルへの第一歩と言えるでしょう。
その虫は本当にカツオブシムシ?