家の敷地内で蜂の巣を見つけても、「自分に直接的な被害がなければ大丈夫だろう」とか、「そのうちどこかへ行くだろう」と安易に考え、放置してしまう人がいます。しかし、この判断は非常に危険であり、時間と共に様々なリスクを増大させることにつながります。最も直接的な危険は、言うまでもなく蜂に刺されるリスクの増大です。蜂の巣は夏から秋にかけて急速に大きくなり、それに伴って働き蜂の数も爆発的に増加します。巣が大きくなればなるほど、巣を守ろうとする蜂の警戒心と攻撃性は高まります。最初は数匹だった蜂が数百匹に増え、巣の防衛範囲も拡大します。そうなると、ただ巣の近くを通りかかっただけで、あるいは洗濯物を干すといった日常的な行動が刺激とみなされ、突然集団で襲われるという事態に発展しかねません。特に小さなお子さんやペットは、危険を察知できずに巣に近づいてしまう可能性が高く、重大な被害につながる恐れがあります。また、危険は自宅の住人だけに留まりません。大きくなった巣から飛び立つ蜂は、隣の家や前の道路にまで飛んでいくようになります。もし隣人や通行人が刺されるようなことがあれば、巣の存在を知りながら放置していたとして、管理責任を問われ、大きな近隣トラブルや損害賠償問題に発展する可能性も否定できません。さらに、建物の資産価値にも影響を及ぼします。屋根裏や壁の中、床下などに巣が作られた場合、蜂が巣材を運び込むために建材をかじったり、巣から出る分泌物によって木材が腐食したりと、建物そのものにダメージを与えることがあります。そうなると、駆除費用だけでなく、高額な修繕費用まで必要になるケースもあります。蜂の巣は、時間と共に解決する問題ではなく、時間と共にあらゆるリスクが雪だるま式に膨らんでいく時限爆弾のようなものです。巣を見つけたら、どんなに小さくても、どんなに生活に支障がない場所に見えても、決して放置せず、できるだけ早い段階で専門家に相談し、適切に対処することが、自分と家族、そして周囲の人々の安全を守るための唯一の道なのです。