大学進学を機に始めた、木造の築古アパートでの新生活。家賃の安さに惹かれて選んだその部屋は、周囲に緑が多くて気に入っていましたが、まさか自然の豊かさが仇になるとは思ってもみませんでした。六月の夕暮れ時、バイトから帰ってきてふと玄関ドアの上の軒先を見ると、直径十センチほどのマーブル模様をした球体がぶら下がっていました。昼間は気づかなかったのですが、そこには頻繁に蜂が出入りしており、中からはかすかに羽音が響いてきます。都会育ちの私にとって、蜂の巣がこれほど身近にあることは恐怖以外の何物でもありませんでした。すぐにでも棒で叩き落としたくなりましたが、ふとスマホで調べると、スズメバチの可能性が高いと出てきて、凍りつきました。すぐに大家さんに連絡しましたが、高齢の大家さんは「自然のことだから仕方ない、そのうちいなくなる」と、のんびりした返事をするばかりで、なかなか動いてくれません。しかし、隣の部屋の人も同じように不安を感じていたようで、二人で協力して管理会社に強く交渉することにしました。「もし住人が刺されたら、管理責任を問われることになりますよ」と、ネットで調べた知識を総動員して伝えると、ようやく重い腰を上げてくれました。翌日に業者が来てくれたのですが、防護服姿の作業員さんが「これはキイロスズメバチで、非常に攻撃的ですよ。よく自分で触らなかったね」と言った時、自分の判断が正しかったことを確信しました。駆除自体は一時間ほどで終わりましたが、その後も数日間は巣があった場所に蜂が戻ってきて、部屋の扉を開けるたびに緊張が走りました。この経験から、賃貸アパートで蜂の巣トラブルに遭った際は、一人で抱え込まずに他の住人と情報を共有し、一致団結して管理側に働きかけることの重要性を学びました。また、古い木造の建物は蜂にとって巣を作りやすい隙間が多いため、日頃から建物の異変に目を光らせておく必要があります。家賃が安い物件にはそれなりの管理リスクがあることを肝に銘じ、今はベランダに自作のハッカ油スプレーを常備しています。あの時の羽音を思い出すと今でも背筋が寒くなりますが、正しい対処法を知っていれば、過度に恐れる必要はないのだと今は感じています。
木造賃貸アパートで蜂の巣と遭遇した学生の切実な記録