衣替えの季節、久しぶりに取り出したセーターやコートに見慣れない小さな穴が開いていた。そんな経験はありませんか。その犯人は、多くの人が知らないうちに家の中に棲みついている小さな害虫、カツオブシムシの幼虫かもしれません。成虫はテントウムシに似た小型の甲虫で、屋外の花の蜜を吸うなど、直接的な害はほとんどありません。しかし、問題なのはその幼虫です。彼らこそが、私たちの衣類や食品を食い荒らす張本人なのです。カツオブシムシの幼虫は、体長数ミリから一センチ程度の毛虫のような姿をしています。種類によって見た目は異なりますが、一般的に見られるヒメカツオブシムシの幼虫は、細長い紡錘形で、体は節くれだっており、茶色と白の縞模様が特徴です。そして何より、体中が硬い毛で覆われており、尾の部分には槍のような長い毛の束があります。この独特の姿から、一度見たら忘れられないかもしれません。彼らの主食は、動物性の繊維やタンパク質です。具体的には、ウールやカシミヤ、シルクといった高級な衣類、毛皮、そして名前の由来ともなった鰹節や煮干しなどの乾物、ペットフード、さらにはホコリの中に含まれる人間のフケや髪の毛、他の虫の死骸まで、驚くほど広範囲のものを食べます。化学繊維の衣類でも、皮脂や食べこぼしなどの汚れが付着していると、その部分を餌として食べてしまい、結果的に穴を開けてしまうことがあります。彼らは暗くて湿度が低く、ホコリが溜まりやすい場所を好みます。クローゼットの隅、タンスの引き出しの奥、ベッドの下、カーペットの裏などが、彼らにとって絶好の住処となるのです。成虫は春から初夏にかけて屋外から飛来し、洗濯物などに付着して家の中に侵入、人目につかない場所に産卵します。そして、孵化した幼虫が一年近くかけてゆっくりと成長しながら、私たちの衣類や食品を食害するのです。大切な衣類に穴が開くという悲劇は、この小さな毛深い訪問者の仕業であることを知っておくことが、対策の第一歩となります。
あなたの服を食べる毛虫の正体