蜂の巣を見つけた際、その後の対応を正しく判断するために不可欠なのが、巣の主がどの種類の蜂なのかを見極めることです。日本で住宅地によく巣を作る蜂として代表的なのが、スズメバチとアシナガバチですが、両者の巣は見た目や特徴が大きく異なります。まず、最も危険性が高いスズメバチの巣は、初期段階ではフラスコを逆さにしたような形をしています。巣作りが進むにつれて、ボールのような球体になり、表面には特徴的な茶色や灰色のマーブル模様、あるいは貝殻が重なったような模様が見られます。巣材は木の皮などを唾液でこねて作られており、外壁がしっかりと覆われているため、外から中の巣盤(蜂の子を育てる六角形の部屋)を見ることはできません。出入り口は通常、下の方に一箇所だけです。この球体でマーブル模様の巣を見つけたら、それは極めて危険なサインであり、絶対に近づかず、速やかに専門業者に連絡する必要があります。一方、アシナガバチの巣は、スズメバチの巣とは全く異なる形状をしています。シャワーヘッドやお椀を逆さにしたような形で、巣盤がむき出しになっているのが最大の特徴です。たくさんの六角形の穴が下を向いており、そこにいる幼虫や蛹の姿を直接見ることができます。巣の色は灰色や茶褐色で、スズメバチのような外壁はありません。巣が作られる場所も、軒下やベランダ、窓枠、庭木など、比較的開放的な場所を好む傾向があります。アシナガバチはスズメバチに比べて攻撃性はおとなしいとされていますが、巣を刺激すれば当然襲ってきますし、毒性も決して弱いわけではありません。巣の形状から「これはアシナガバチだから大丈夫だろう」と安易に判断せず、巣が大きくなっていたり、人の生活動線上にある場合は、やはり専門家への相談が賢明です。巣の見た目を正しく識別することは、その後のリスクを判断し、適切な行動をとるための重要な第一歩となるのです。
スズメバチとアシナガバチ巣の見分け方