マイホームに甚大な被害をもたらす白蟻。その駆除や修繕には高額な費用がかかることがありますが、多くの人が「もしかしたら加入している火災保険が使えるのでは?」と一縷の望みを抱くかもしれません。しかし、残念ながら、ほとんどのケースにおいて、白蟻による被害は火災保険の補償対象外となります。これは、火災保険が基本的に「急激かつ偶発的な外来の事故」による損害を補償するものであるのに対し、白蟻の被害は時間をかけて進行する「予測可能な劣化」や「虫害」と見なされるためです。風災や水災、火災のように、ある日突然起こる偶発的な出来事とは性質が異なると判断されるのです。したがって、白蟻によって柱が腐食したとしても、その修繕費用が保険金として支払われることはまずありません。同様に、地震保険も白蟻被害そのものを直接補償することはありません。地震保険は、地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害を補償するものであり、白蟻による建物の劣化は対象外です。ただし、ここで知っておきたい間接的なリスクがあります。それは、白蟻被害によって建物の耐震性が著しく低下していた場合、地震が発生した際に倒壊や半壊といったより大きな損害につながる可能性があるということです。この場合、地震による損害として地震保険の補償対象にはなりますが、そもそも白蟻対策をしっかり行っていれば防げたかもしれない被害とも言えます。近年では、ごく一部の保険会社や共済で、火災保険のオプションとして「建物付属設備等修理費用補償特約」といった名称で、白蟻駆除費用を一部補償する特約を用意している場合があります。しかし、これはまだ一般的ではありません。保険は万能ではないのです。最も確実なリスク管理は、保険に頼ることではなく、定期的な点検と予防によって、白蟻被害を未然に防ぐことなのです。
白蟻被害は住宅保険でカバーできるか