一口にゴキブリと言っても、日本の家屋でよく見られる種類は主に二つあり、その生態や活動時期には大きな違いがあります。それが、大型で黒光りする「クロゴキブリ」と、小型で茶色い「チャバネゴキブリ」です。これらの違いを理解することは、より効果的な対策を立てる上で非常に重要です。まず、クロゴキブリは日本の在来種に近く、屋外と屋内を行き来して生活する半屋外性のゴキブリです。体長は三センチから四センチほどで、成虫になるまでに一年以上かかることもあります。彼らの活動は気温に大きく左右され、主に春から秋にかけて活発になります。特に、気温と湿度が高くなる夏に活動のピークを迎え、屋外から餌や水を求めて家の中に侵入してきます。冬になると屋外の個体の多くは死んでしまいますが、暖かい建物内に侵入した個体は越冬し、春に再び活動を開始します。したがって、クロゴキブリ対策は、彼らが活発に侵入してくる夏前の春から秋にかけて、侵入経路を塞ぐことと、屋外にもベイト剤を設置することが中心となります。一方、チャバネゴキブリは体長が一センチから一・五センチほどと小型で、その生態はクロゴキブリとは全く異なります。彼らは寒さに非常に弱く、屋外では越冬できません。そのため、一度建物内に侵入すると、完全に屋内で一生を過ごし、世代交代を繰り返します。飲食店などで問題になるのは主にこのチャバネゴキブリです。彼らは暖かい場所を好み、特に冷蔵庫のモーター周りなど、常に熱を帯びている場所を巣にします。クロゴキブリと違い、気温が安定した屋内では季節に関係なく、一年中活動し、繁殖することが可能です。成長スピードも非常に速く、好条件が揃えば一世代が二ヶ月ほどで入れ替わり、爆発的に増殖します。そのため、チャバネゴキブリの対策は季節を問わず、年間を通して行う必要があります。一匹でも見つけたら、すでに巣が形成されている可能性が高く、ベイト剤などを用いて巣ごと根絶を目指す、徹底的かつ継続的な駆除が求められるのです。
クロゴキブリとチャバネゴキブリの活動期