厳しい寒さが続く冬。多くの虫が姿を消すこの季節、人々はゴキブリの脅威からも解放されたと考えがちです。しかし、その油断こそが、翌年の夏に悪夢を見る原因となり得ます。確かに、屋外にいるゴキブリの多くは、寒さで死滅したり、活動を停止して越冬状態に入ったりします。しかし、現代の気密性が高く、暖房の効いた家の中は、彼らにとって冬でも快適に過ごせる温室のようなものです。冬にゴキリブを見かけなくなるのは、彼らがいなくなったからではなく、暖かい隠れ場所に潜んで活動が鈍っているだけなのです。彼らが好む冬の潜伏場所は、熱源の近くです。冷蔵庫やテレビ、パソコンといった常に稼働している家電製品のモーター周りは、年間を通して暖かく、彼らにとって最高のシェルターとなります。また、段ボールの中や、キッチンのシンク下、押し入れの奥など、暖かく湿気があり、人の気配が少ない場所も格好の隠れ家です。こうした場所で、彼らはじっと春を待ちながら、場合によっては暖かい環境下でひっそりと繁殖を続けていることさえあります。冬のゴキブリ対策が重要な理由は、まさにこの点にあります。彼らの活動が鈍っている冬の間に潜伏場所を特定し、徹底的に清掃、駆除することで、春以降の繁殖を根本から断つことができるのです。特に注目すべきは、卵鞘(らんしょう)の駆除です。冬の間に産み付けられた卵は、春になると一斉に孵化します。大掃除の際に、家電の裏や家具の隙間などを念入りにチェックし、小豆のような形をした卵鞘を見つけたら、確実に潰して処分することが、翌年の大量発生を防ぐ上で絶大な効果を発揮します。冬は、ゴキブリとの直接対決が少ない分、彼らの根城や次世代の芽を静かに、そして確実に取り除くことができる絶好のチャンスなのです。目に見えないからといって安心せず、冬こそ計画的な対策を行うことが、一年を通した平和な暮らしを守るための鍵となります。
冬のゴキブリ対策こそ油断大敵