壁や床に白い小さい虫を発見した時、手っ取り早く一掃したいという思いから、燻煙・燻蒸タイプの殺虫剤、いわゆる「バルサン」の使用を考える人は多いでしょう。確かに、部屋の隅々まで薬剤を行き渡らせることができるため、広範囲に潜むチャタテムシなどを駆除するには効果的な手段の一つです。しかし、その使用にはメリットとデメリットの両方を理解しておく必要があります。燻煙剤の最大のメリットは、その網羅性です。家具の裏や隙間など、普段は手の届かない場所に隠れている虫にも薬剤が届くため、一網打尽にできる可能性があります。しかし、デメリットも少なくありません。まず、使用前の準備が大変です。食品や食器、ペット、観葉植物などを部屋の外に出したり、ビニールで覆ったりする必要があります。また、火災報知器が反応しないようにカバーをかける手間も忘れてはなりません。そして何より、薬剤が届くのはあくまで室内の空間であり、壁の内部や畳の芯、本の隙間などに潜む卵や幼虫には効果が薄い場合があるということです。そのため、一度駆除しても、しばらくすると再び発生してくる可能性があります。一方、アルコールスプレーや、害虫駆除用のスプレーを直接吹きかける方法は、見つけた個体をピンポイントで駆除するのに適しています。特に、高濃度のアルコールスプレーは、殺虫成分を含まないため、キッチン周りなどでも比較的安心して使用できます。しかし、これもまた、目に見える個体を駆除できるだけで、根本的な解決にはなりません。結局のところ、これらの駆除方法は、あくまで対症療法に過ぎないのです。本当に重要なのは、駆除と並行して、虫が発生した原因である「湿気」と「カビ・ホコリ」を取り除くこと。換気や除湿、徹底した掃除を行い、彼らが棲みにくい環境を作らない限り、この戦いに終わりは来ないのです。