浴室や台所など、湿気の多い場所に現れるチョウバエは、その見た目から不快害虫として嫌われていますが、彼らの生態を詳しく知ることは、効果的な駆除戦略を立てる上で非常に役立ちます。チョウバエは、ハエという名前がついていますが、実はカに近い仲間です。成虫の体長は数ミリ程度で、体全体が灰色の毛で覆われており、静止する際には羽を広げて壁などにとまる習性があります。その姿が蝶に似ていることから、この名が付けられました。彼らの寿命は比較的短く、成虫になってからは長くても二週間程度しか生きられません。しかし、問題なのはその驚異的な繁殖力です。一匹のメスは、その短い生涯のうちに数百個もの卵を産むことができます。この卵が産み付けられる場所が、駆除の最大のポイントとなる排水管内のヘドロやスカムといった有機性の汚泥の中です。卵は約二日で孵化し、ウジ虫状の幼虫になります。幼虫は汚泥を食べて成長し、約十日間の幼虫期間を経て蛹になり、さらに数日後には成虫となって飛び出してきます。この卵から成虫までの一連のライフサイクルは、気温が二十五度前後の快適な環境下では、わずか二週間ほどで完了します。これが、一度チョウバエが発生すると、あっという間に数が増えてしまう理由です。彼らは飛ぶ力が弱く、長距離を移動することは得意ではありません。そのため、発生源のすぐ近く、つまり排水口周辺の壁などで見つかることがほとんどです。この「長距離を飛べない」という特性は、裏を返せば、チョウバエを見かけた場所のすぐ近くに発生源があるという有力な手がかりになります。また、彼らは夜行性で、昼間は壁などでじっとしていますが、夜になると活発に活動を始めます。駆除作業を行う際は、薬剤を流して放置するなど、彼らが活動を始める夜間に行うとより効果的な場合があります。このように、彼らの短い寿命、驚異的な繁殖力、そして限られた行動範囲といった生態的な特徴を理解することが、目先の成虫退治に終わらない、根本的な駆除計画を立てるための羅針盤となるのです。
チョウバエの生態を知り効果的に駆除