カツオブシムシという名前が示す通り、この害虫の幼虫は衣類だけでなく、私たちの食料、特にキッチンに保管されている乾物を好んで食べます。気づかないうちに、パスタや小麦粉の袋の中に小さな毛虫が潜んでいた、という恐ろしい事態を避けるためには、キッチンにおける食品の保存方法を根本から見直す必要があります。カツオブシムシの幼虫が好むのは、鰹節や煮干し、干しエビといった動物性の乾物だけではありません。小麦粉やパン粉、ホットケーキミックスなどの粉類、乾燥パスタ、素麺、さらにはスパイスやペットフードまで、非常に広範囲の食品が彼らのターゲットとなります。多くの食品は、購入した時のビニール袋や紙袋のまま、戸棚や引き出しに保管されがちです。しかし、これらの包装は、飢えた幼虫の鋭い顎の前では決して万全なバリアとは言えません。彼らは薄いビニールや紙の袋をいとも簡単に食い破り、中へと侵入してしまうのです。一度侵入を許してしまうと、食品の中で繁殖を繰り返し、気づいた時には食品が食べられない状態になっているばかりか、その戸棚全体が汚染されてしまうことにもなりかねません。このような被害を防ぐための最も確実な方法は、食品を密閉性の高い容器に移し替えて保存することです。ガラス製や硬質プラスチック製の、パッキンが付いた密閉容器が理想的です。購入した乾物や粉類は、開封したらすぐにこれらの容器に移し替える習慣をつけましょう。これにより、物理的に幼虫の侵入を防ぐことができます。また、カツオブシムシは唐辛子の成分を嫌うと言われています。お米の防虫剤として唐辛子が使われるように、乾物や粉類を保存している戸棚の隅に、乾燥唐辛子を数本置いておくのも、気休め以上の効果が期待できるかもしれません。そして、何よりも重要なのが定期的な清掃です。戸棚や引き出しの内部をこまめにチェックし、掃除機で隅々まで吸い取ります。食品の粉やカスがこぼれていると、それが幼虫を誘引する原因となります。キッチンを常に清潔に保ち、食品を適切に密閉保存すること。この二つの基本を守るだけで、厄介な食品害虫の発生リスクを劇的に減らすことができるのです。
キッチンの乾物を守る害虫対策